『ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償~』

 

 

昨日、渋谷のアップリンクで、この映画を観てきました。アップリンクは小さなこじんまりした映画館で、

初めて行きましたが、主にサブカル的マイナー映画を上映しているようでした。映画好きはハマるかも

知れません。 http://www.uplink.co.jp/movie/2015/40031

 

この映画は、華やかなファッション業界の裏側を描いた作品で、今や私たちの生活に欠かせなくなった、

ファストファッションの影の部分を、ドキュメンタリータッチで紹介しています。

 

普段、私たちはファストファッションで身を飾っても、その裏側がどうなっているのかなんてことは、

ほとんど考えたことがないのではないでしょうか?

 

昨年、学校のオリエンテーションでファストファッションについてお話しました。毎回初回の授業では、

何かテーマを決めて話すことにしているのですが、ファッション業界にどっぷり身を置いていた私にとって、

このファストファッションの台頭は、まさにextraordinaire”(奇妙な、並外れたという意味)そのものでした。

 

ここで、その時調べた東京経済大学の北村真琴先生の文献(2012)を紹介します。

言わずと知れたファストファッションですが、そのファストファッション型の製品開発プロセスについては、

あまり知られていないと思います。以下、文献より抜粋しました。

 

 

<ファストファッション型とは…>

 

実シーズン直前ないし実シーズンに入ってから、企画・生産を行い、1か月程度で、商品を店頭に並べている。

製品は、1)流行を反映したものであり、2)ファッション性も高く、3)手の届きやすい低価格で、しかも、4)頻繁に

新商品が生産されるため、製品の鮮度が常に高い。→セールをしなくても製品を売りきれる。

(最近はセールも行っているようですけど…)

 

 

例として<ZARA>の製品開発プロセスを見てみると… (北村先生調べによる)

 

 

○実シーズン直前ないし実シーズンに入って、流行情報を収集したら、すぐに企画生産に入り、

 製品の(40%)を自社工場で、(60%)を協力工場で生産。

 

○企画から1か月程で製品を仕上げ、仕上がった服は、巨大な物流センターで仕分けされて、

 週2回店舗へ出荷。

 

○欧州の店舗へは、トラック輸送により24~36時間以内に、米国や日本の店舗へは、空輸により

 48~72時間以内に、其々届けられる。

 

 

ZARAは、年間約1万3000デザインの多品種を生産しており、新商品は、必ず店舗に送られ、日本では、1つの

デザインについて「S2枚、M2枚、L1枚」の計5枚が基本。(因みに、私が新宿のZARAに確認したところ、毎週

月曜と木曜に新商品が入荷するそうで、都内では新宿と銀座の品揃えが一番豊富だとのこと。)これを多品種

少量生産と言うが、値下げに頼らずに製品を売りきり、物流コストは多大だが、多額の宣伝・広告費をかけずに、

店頭の新鮮さで、消費者を引き付けている。

 

 

映画のなかで、ジャケットをキッチンペーパー代わりにして汚れたテーブルを拭き、そのままゴミ箱へポイ。

そして新たにペーパーホルダーからジャケットを出すというシーンがあり、思わず笑ってしまいましたが、

実際にジャケットを作ったことがある人ならわかると思います。ジャケットを作るのにどれだけの手間と時間が

係るのかということを。。それが、ファストファッションブランドの手にかかると、その価値は途端に失われて

しまうのです。

 

他にも知らなかった衝撃的なシーンもありましたが、光があるところには必ず影もあるということを私たちは

知らなければなりません。但し、物事には多面的な要素があり、ある一面だけを切り取ってそれを語ることは

出来ないとも考えます。この映画はその影、その舞台裏を明らかにしたものですが、これでファストファッション

のすべてが語りつくされたとも思ってはいません。

 

ファストファッションは、必ず歴史のページに残るでしょう。アパレル業界にとってはある意味、黒船襲来の時の

ような衝撃ではなかったかと思います。ビックバンとでも言いましょうか、今はただそれが通り過ぎるのをじっと

待つことしか術はないのでしょうか。。

 

最後に一言、映画館に行くときはファストファッションは着ていかない方がいいと思います!映画を観た後は、

やはり、何かしら罪悪感のようなものを感じます。何も考えず、バッチリZARAの服を着ていった私は、早足で

そこを立ち去りました 💦 駅までの道のり、ファストファッションの店舗の多いこと。いくつも遭遇し、その度に

ちょっぴり気まずさを感じながら…小走りで駅へ。

 

今日も新聞の折り込みに、ユニクロセールのチラシが入っていました。ユニクロなどが行っているリサイクルの

一環として発展途上国に古着を送る制度も、私たちが少しの罪悪感を解消するためにやっているただの自己

満足でしかないことを知りショックを受けました。送られた服が山積みになって、実際に使える服は、全体の

10%にも満たないということ。善意の行いも、迷惑になっているという現状。それらのことは、知っておくべき

事実なのです。