魔除け-身にまとう祈るこころ-

 

文化学園の服飾博物館で、現在展示されています。2015年12月17日~2016年2月17日まで。

 

 

 

“魔”とは、一般に、人の心を惑わす悪鬼(悪魔)や災いをもたらす魑魅魍魎、人を一事に熱中させるもの(例:

 詩魔)や一事に偏執すること(例:電話魔)などを指す。仏教における「魔」に由来する。(Wikipediaより)

 

 

科学が発達する以前、生命を脅かす目に見えないものを人々は「魔」とみなし、魔を追い払う力や神聖さを保つ力が

あるとされる文様や色、素材を衣服に使用し身にまといました。

 

魔の侵入口と考えられていた衣服の開口部や目の行き届かない背部には、刺繍やビーズなどで結界を築き、耳や

など人間の機能や生命にかかわる大事な部分には、護符の意味を持つアクセサリーを身につけ身の安全を祈りました。

 

 

“結界”とは聖なる領域と俗なる領域を分け、秩序を維持するために区域を限ること。仏教用語。(Wikipediaより)

 

 

それらは、テクノロジーが発達した現代においても、霊、魔、といった科学で証明されない超自然的存在から身を

守る手立てとして現存します。また私たちも、お正月には神社にお参りし、一年の無事を祈願して、縁起物の御札や

お守りを買ったりします。

 

その行為やお守りを身につけることで、安心である、気持ちが落ち着く、といった効果が少なからず得られるから

です。実際にどうかはわかりません。しかし、脈々と続いている儀式のような行い、それが文化として根付いている

ものに関しては、やはり何かしらの意味があり、想いがあると言うことは理解出来ます。

 

ここに展示されているのは、アジア・アフリカ地域を中心とした各民族の服飾に見られる多様な魔除けを紹介しています。

これまで、単なる服飾デザインとして捉えていたものに、意味があり、想いがあったのだと言うことを知ることが出来ました。

 

 

 

 

女性はアクセサリーが好きです。それは、世界共通のことのようです。現代は単にお洒落アイテムとしてファッションの一部

として扱われていますが、かつては、男性に比べて体力の劣る女性は、衣服の開口部にあたる衿ぐりや袖口、裾口などに

飾りを施し、文様の付いた布地をまとい身を守りました。

 

現代のネックレスやブレスレット、アンクレットなどは、かつては女性のお守りアイテムだったわけです。今も、お守りとして

願いを込めて身につけることがあるかも知れません。

 

この衣服の開口部というのは、暑さ、寒さに対する温熱調節を果たす役割を担っています。衣服の機能性と言うことを考え

た場合、非常に重要な部分であり、寒いときは、自ずと開口部のすぼまったものを着て、暑いときは、開口部が大きく開いた

ものを着ていると思います。

 

人間は体温調節がうまく出来ないと、風邪を引いたり、熱中症になったりします。衣服はこの生理機能と運動機能の両方を

果たしていることが重要と言えます。

 

では、衣服の背中側というのはどうでしょうか。自分で目の行き届かない背部に対しては、以外と手を抜きがちで、無頓着

且つ無防備なのではないでしょうか。昔は、そんな油断から“魔”が入るとし、尖った飾りやじゃらじゃら音が鳴るものをぶら

下げていました。確かに、後に目はついていないので、どんな魔物が襲って来るかわからない、そんな恐れがあったので

しょう。現代でも起こり得ることですが…。

 

このように、民族服には様々な意味合いが隠されていて、とりわけ子供や過酷な環境の中で生きる遊牧民の服飾には、

様々な魔除けの表現や護符が見られたそうです。そうして、身の安全と無事を願ったとされています。