シミュレーションについて

 

 

本を買いました。信州大学繊維学部の先生方が執筆された専門書です。その中には、うちの大学院でも講義して下さった、

感性工学がご専門の乾 滋教授も、シミュレーションについて執筆されていました。テクノロジーが発達して久しい昨今、

様々な分野でシミュレーションソフトが開発され、実用化されています。それはアパレル分野においても例外ではありません。

 

現在、私が使用しているアパレルCADは、東レACSの最新機種、クレアコンポⅡですが、同社で最初に、3D機能を搭載した

ソフトは、ひとと(人人人)でした。今は、クレアコンポⅡに移行し、ひとと(人人人)のサービスは終了していますが、2010年に、“ひとと” が発売された当初は、非常に画期的で3Dという新たな機能に衝撃を受けました。この3次元のアパレルCADは、40年以上も前から各社で開発が開始されていましたが、その普及が加速化したのはわずか4~5年くらい前ではなかったかと思います。

 

本によると、アパレルCADなどに見られるシミュレーションは、工学的な意味を持ち、数値的な計算により結果が

導き出されるものとされています。その要素として、対象とするモデル、データ、解法(問題を解く具体的な方法)などがあり計算を実行すると結果が得られるという仕組みになっています。

 

しかし、乾教授はその問題点も指摘しています。シミュレーションのモデルは、複雑な現実を単純化したもので、

現実を反映する為の要因が十分にモデルに組み込まれていなければ、妥当な結果を得ることは難しく「ある程度」

詳しい情報が必要であると述べています。

 

3Dシミュレーションのモデルに、どの程度の要因が組み込まれているのか、各社で明らかにされていないので

わかりませんが、少なくとも、現実を反映する為に必要な要因が、十分であるとは言えないと実感しています。

この「ある程度」という曖昧さが、バーチャルにおける再現の難しさを証明しているようにも思えます。また、

3Dシミュレーションをどのように利用するかでも意見は分かれるのかも知れません。

 

現在の3Dシミュレーションを、パタンナー的観点から評価するならば、再現性という点において、残念ながら、

3Dシミュレーションがトワルチェックの代わりにはなり得ないと考えます。この点について、自らの研究においても

今なお検証中で、私自身の工学的知識が乏しい故、単なるユーザーとしての意見しか言えないことがもどかしいところです。